1.2.1 基礎事項

$ X$ を Banach 空間、$ U$$ X$ の開集合、 $ f\colon U\to X$ を Fréchet 微分可能な写像とするとき方程式

(1.3) $\displaystyle f(x)=0$

を考える。適当な $ x_0\in U$ を取って漸化式

(1.4) $\displaystyle x_{k+1}=x_k - \left(f'(x_k)\right)^{-1}f(x_k)$

で列 $ \{x_k\}_{k\in\mathbb{N}}$ を生成したとき、これが極限 $ x_\infty$ を 持つことがある。このとき $ x_\infty$ は (1.3) の 解となる。

以下 $ \left(f'(x_k)\right)^{-1}$ のことを $ f'(x_k)^{-1}$ と書く。

そこで十分大きな番号 $ k$ を取って、 $ x_k$ を (1.4) の近似解として採用する方法が 考えられるが、それを Newton 法と呼ぶ。形式的には

$\displaystyle F(x):= x-f'(x)^{-1} f(x)
$

で定められる $ F$ の不動点を反復法で求めていることになる1.1


\begin{jremark}[Newton 法という名前について]
Newton が $3$ 次方...
...by{ラフソン}{Raphson} 法と呼ばれることが多い。\qed
\end{jremark}


\begin{jremark}
% latex2html id marker 107 [準 Newton 法]
$f$ の値の計...
... Newton 法などと呼ぶ。これは線形収束となる。\qed
\end{jremark}


\begin{jdefinition}[$p$ 次収束]
$p\ge 1$ に対して、
$\{x^{(k)}\}_{k\i...
... $1$ 次収束} (superlinear convergence) するという。
\end{jdefinition}

線形収束の場合、

$\displaystyle \Vert x^{(k)}-a\Vert\le L^{k}\Vert x^{(0)}-a\Vert
$

が成り立つ。つまり等比数列的 (あるいは指数関数的) に収束するわけである。


\begin{jtheorem}[Newton]
$\Omega$ を $\mathbb{R}^n$ の開集合、
$f\colon...
...rt a-x_{k}\Vert^2\quad\mbox{($k\in\mathbb{N}$)}.
\end{displaymath}\end{jtheorem}

証明. (概略) $ f$$ C^2$-級で、$ f(a)=0$ と仮定すると、十分 $ a$ に 近い $ x_k$ に対して
  $\displaystyle x_{k+1}-a$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \left[x_k-f'(x_k)^{-1}f(x_k)\right]-a$
    $\displaystyle =$ $\displaystyle x_k-a-f'(x_k)^{-1}f(x_k)$
    $\displaystyle =$ $\displaystyle x_k-a-f'(x_k)^{-1}\left(f(x_k)-f(a)\right)$
    $\displaystyle =$ $\displaystyle x_k-a-f'(x_k)^{-1}
\left[f'(x_k)(x_k-a)-O\left((a-x_k)^2\right)\right]$
    $\displaystyle =$ $\displaystyle O\left((a-x_k)^2\right).$

詳しくは例えば山本 [19] を見よ。 $ \qedsymbol$ $ \qedsymbol$

重根の場合は収束の速さが線形収束になり (つまり「収束が遅い」)、 実際の数値計算で得られる最終的な精度も低い。


\begin{jremark}
上の定理では舞台を $\mathbb{R}^n$ としたが、Bana...
...のだが、
Schwartz \cite{Schwartz} も見ておこう。 \qed
\end{jremark}



Subsections
桂田 祐史