2.11 直交射影作用素

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\begin{jdefinition}[直交射影作用素]
$V$\ を $\R^n$\ の線型部分空...
...^n$\ を $V$\ への\textbf{直交射影作用素}と呼ぶ。
\end{jdefinition}

\begin{jproposition}[直交射影作用素は巾等な対称線形作用素]
$\...
...2=P$.
\item $P$\ は対称である: $P^T=P$.
\end{enumerate}\end{jproposition}

(1)
$ x_1\in\R^n$ , $ x_2\in\R^n$ $ \lambda_1\in\R$ , $ \lambda_2\in\R$ と する。$ P x_1=y_1$ , $ P x_2=y_2$ と置こう。仮定から $ y_1,y_2\in V$ かつ $ x_1-y_1\in V^\perp$ , $ x_2-y_2\in V^\perp$ . このとき、 $ \lambda_1y_1+\lambda_2y_2\in V$ かつ

$\displaystyle (\lambda_1x_1+\lambda_2x_2)-(\lambda_1 y_1+\lambda_2 y_2)
=\lambda_1(x_1-y_1)+\lambda_2(x_2-y_2)
\in V^\perp.
$

ゆえに

$\displaystyle P(\lambda_1 x_1+\lambda_2 x_2)=\lambda_1 y_1+\lambda_2 y_2
=\lambda_1 P x_1+\lambda_2 P x_2.
$

(2)
$ x\in\R^n$ とするとき、$ P x=y$ と置こう。$ y\in V$ , $ x-y\in V^\perp$ で ある。明らかに $ y\in V$ , $ y-y=0\in V^\perp$ であるから、$ P y=y$ . すなわ ち $ P^2 x=P x$ . ゆえに $ P^2=P$ .
(3)
$ V$ の正規直交基底 $ v_1$ , $ \cdots$ , $ v_m$ を取ると

$\displaystyle (P x,y)=\left(\sum_{j=1}^m (x,v_j)v_j,y\right)
=\sum_{j=1}^m (x,v_j)(v_j,y),
$

$\displaystyle (x,Py)=\left(x,\sum_{j=1}^m (y,v_j)v_j\right)
=\sum_{j=1}^m (y,v_j)(x,v_j).
$

ゆえに $ (Px,y)=(x,Py)$ . これは $ P^T=P$ を意味する。 $ \qedsymbol$

実は $ P^2=P$ , $ P^T=P$ という条件を満たす $ P$ は適当な線型部分空間 $ V$ への直交射影作用素になる。


\begin{jproposition}[]
$P\in\R^{n\times n}$\ が $P^2=P$, $P^T=P$\ を満たす...
...と、
$V$\ への直交射影作用素は $P$\ になる。
\end{jproposition}
$ V=\ker(I-P)$ は明らかに $ \R^n$ の線型部分空間である。 $ x\in\R^n$ に対して $ P x=y$ とおく。 仮定 $ P^2=P$ より、 $ P y=P(Px)=(P P)x=P^2 x=P x=y$ であるから、$ V$ の定義によって $ y\in V$ . また $ \forall v\in V$ に対して $ P v=v$ に注意すると

$\displaystyle (x-y,v)=(x,v)-(y,v)=(x,v)-(Px,v)=(x,v)-(x,Pv)=(x,v)-(x,v)=0.
$

すなわち $ x-y\in V^\perp$ . ゆえに $ y$ $ x$ $ V$ への直交射影である。 $ \qedsymbol$

これから単に $ P^2=P$ , $ P^T=P$ を満たす $ P\in\R^{n\times n}$ のことを 直交射影作用素と言っても良いであろう。対応する線型部分空間 $ V$ $ \ker (I-P)$ と書けることが分かったが、後のためにもう少し調べておこう。

\begin{jproposition}
$P\in\R^{n\times n}$\ が直交射影作用素であると...
...er (I-P)=\{x\in\R^n; Px=x\}={\rm image\;} P.
\end{displaymath}\end{jproposition}
まず

$\displaystyle \ker (I-P)=\{x\in\R^n; (I-P)x=0\}
=\{x\in\R^n; Px=x\}.
$

明らかに

$\displaystyle \{x\in\R^n; Px=x\}\subset {\rm image\;}P
$

であるが、$ P^2=P$ より $ \{x\in\R^n; Px=x\}\supset {\rm image\;}P$ も分か る。実際 $ y\in {\rm image\;}P$ とすると、 $ \exists x\in\R^n$ s.t. $ P x=y$ となるが、 $ P y=P (P x)=P^2 x=P x=y$ であるから $ y\in \{x\in\R^n;
P x=x\}$ . $ \qedsymbol$


\begin{jproposition}[]
$P\in\R^{n\times n}$\ が直交射影作用素である...
...なったとすると、実は $y=Px$, $z=Qx$.
\end{enumerate}\end{jproposition}

(1)
$ Q$ が巾等かつ対称であることは簡単な計算で分かる。

$\displaystyle Q^2=(I-P)^2=I^2-IP-PI+P^2=I-2P+P^2=I-2P+P=I-P=Q,
$

$\displaystyle Q^T=(I-P)^T=I^T-P^T=I-P=Q.
$

(2)
$ I=P+(I-P)=P+Q$ であるから、任意の $ x\in\R^n$ に対して

$\displaystyle x=Px+Qx\in {\rm image\;}P+{\rm image\;}Q.
$

ゆえに $ \R^n\subset{\rm image\;}P+{\rm image\;}Q$ . もちろんこれは 等号になる。
(3)
$ x$ , $ y\in\R^n$ とするとき、

$\displaystyle (Px,Qy)=(x,P Qy)=(x,P(I-P)y)=(x,Py-P^2y)=(x,Py-Py)=(x,0)=0
$

であるから、

$\displaystyle {\rm image\;}P\perp{\rm image\;}Q.
$

(4)
$ x=y+z$ , $ y\in {\rm image\;}P$ , $ z\in{\rm image\;}Q$ としよう。 $ y\in {\rm image\;}P$ より $ P y=y$ . $ z\in{\rm image\;}Q=\ker(I-Q)=\ker P$ より $ Pz=0$ . ゆえに $ Px=Py+Pz=y+0=y$ . 同様にして $ Qx=Qy+Qz=0+z=z$ . $ \qedsymbol$

桂田 祐史
2017-04-30