2.10 正規直交基底の応用 (2) -- 線型部分空間の直交

懸案の問題を片付けよう。


\begin{jproposition}[直交補空間の次元]
$V$\ を $\R^n$\ の線型部分...
...begin{displaymath}
\dim (V^\perp)=n-\dim V.
\end{displaymath}\end{jproposition}
$ \R^n$ の基底 $ u_1$ , $ \cdots$ , $ u_n$ を、最初の $ m$ $ u_1$ , $ \cdots$ , $ u_m$ $ V$ の基底になるように取る。 これに Gram-Schmidt の正規直交化を施して、 正規直交基底 $ v_1$ , $ \cdots$ , $ v_n$ を作ると、 $ {\rm Span}(v_1,\cdots,v_m)
={\rm Span}(u_1,\cdots,u_m)=V$ であるから、$ v_1$ , $ \cdots$ , $ v_m$ $ V$ の正規直交基底になる。このとき実は

$\displaystyle V^\perp={\rm Span}(v_{m+1},\cdots,v_{n})
$

となることはほぼ明らかである。実際、任意の $ x\in\R^n$

$\displaystyle x=\sum_{j=1}^n (x,v_j)v_j
$

と展開できるが、

$\displaystyle x\in V^\perp\quad\Iff\quad
(x,v_j)=0$   $\displaystyle \mbox{($j=1,2,\cdots,m$)}$

であるので、 $ x\in V^\perp$ ならば $ x\in {\rm Span}(v_{m+1},\cdots,v_n)$ . つまり $ V^\perp\subset {\rm Span}(v_{m+1},\cdots,v_n)$ . 逆の $ V^\perp\supset {\rm Span}(v_{m+1},\cdots,v_n)$ も簡単。$ \qedsymbol$

これで懸案だった

(2.4) $\displaystyle \mbox{$V$ が線型部分空間}$$\displaystyle \quad\Iff\quad (V^\perp)^\perp=V$

の証明が完結する。妙にてこずったように思われるかもしれないが、 実は無限次元の内積空間の場合には、 (5.3) は一般には成り立たない事実なのである。

桂田 祐史
2017-04-30