3.2.1 問題の設定と数値解法の基本原理

常微分方程式としては正規形8のもののみを扱います。後で例で見るように、高階の方程式も一階の方程式に 帰着されますから、当面一階の方程式のみを考えます。 独立変数を $ t$、未知関数を $ x=x(t)$ とすれば、一階正規形の常微分方程式 とは

(8) $\displaystyle \frac{dx}{dt}=f(t,x) \quad(t\in (a,b))$

の形に表わされる方程式のことです。ここで $ f$ は既知の関数です。 初期条件としては

(9) $\displaystyle x(a)=x_0 \quad\hbox{($x_0$ は既知定数)}$

の形のものを考えます。$ x_0$ は既知の定数です。(1),(2) を同時に満たす関 数 $ x(t)$ を求めよ、というのが一階正規形常微分方程式の初期値問題です。 この時関数 $ x(t)$ を初期値問題 (1),(2) の解と呼びます。

常微分方程式の数値解法の基本的な考え方は次のようなものです。「問題と なっている区間 $ [a,b]$

$\displaystyle a=t_0<t_1<t_2<\cdots<t_N=b
$

と分割して、各“時刻”$ t_j$ での $ x$ の値 $ x_j=x(t_j)$ ( $ j = 1, 2,
\ldots, N$) を近似的に求めることを目標とする。そのために微分方程式 (1) から $ \{x_j\}_{j=0,\ldots,N}$ を解とする 適当な差分方程式9を作り、それを解く。」

区間 $ [a,b]$ の分割の仕方ですが、以下では簡単のため $ N$ 等分すること にします。つまり

$\displaystyle h=(b-a)/N, \quad t_j=a+j h.
$

となります。



桂田 祐史