next up previous
Next: 2 Lagrangeの未定乗数法 (条件付き極値問題) Up: 多変数の微分積分学1 第23回 Previous: 多変数の微分積分学1 第23回

1 多変数関数の最大最小問題やりかけの問題

極値問題の最初に、

(1) $\displaystyle f(x,y):=3x^2+2y^2+2x y-2x-2y+1$

の、

(2) $\displaystyle K:=\{(x,y)\in\R^2; x\ge 0, y\ge 0, x+y\le 1\}$

における最大値、最小値を求めよ、という問題を提示した。

$ f$$ \R^2$ での極値を求めてみよう。 $ \nabla f(x,y)=0$ $ \LongIff$ $ (x,y)=\left(\dfrac{1}{5},\dfrac{2}{5}\right)$. この点で Hesse 行列は正値であるので、$ f$ は狭義の極小になることが分かる。 極小値 $ f\left(\dfrac{1}{5},\dfrac{2}{5}\right)=\dfrac{2}{5}$.


\begin{jtheorem}[Weierstrass の最大値定理]
コンパクト集合 $K$ で定義された連続関数 $f\colon K\to\R$ は、
必ず最大値と最小値を持つ。
\end{jtheorem}

\begin{jcorollary}
$K$ が $\R^n$ の空でない有界閉集合とするとき、
連続関数 $f\colon K\to\R$ は必ず最大値と最小値を持つ。
\end{jcorollary}

(2) の $ K$ は明らかに閉集合である (多項式関数 (それは連続!) と $ \ge$, $ \le$ で定義されている)。

「有界」については定義を思い出そう。

\begin{jdefinition}[有界集合]
$A\subset \R^n$ とする。
$A$ が有界であるとは、...
...Vert x\right\Vert\le R
\end{displaymath}が成り立つことをいう。
\end{jdefinition}

$ A$ が有界であるとは、要するに、 原点を中心とする十分大きな半径 $ R$ の閉球 $ \overline{B}(0;R)$$ A$ が含まれることである。

(2) の $ K$ は、

$\displaystyle K\subset \overline B(0;1)
$

を満たすので、有界性の条件が $ R=1$ として成り立つ。 ゆえに (2) の $ K$ は有界である。

従って Weierstrass の最大値定理によって、 (1) で定義された $ f$$ K$ で最大値、最小値を持つ。

$ K$ を内部

$\displaystyle K^\circ=\{(x,y)\in\R^2; x>0, y>0, x+y<1\}
$

と境界

      $\displaystyle K^b=\overline K\setminus K^\circ =E_1\cup E_2\cup E_2=$(三角形の周)$\displaystyle ,$
      $\displaystyle E_1:=\{(x,0);x\in[0,1]\},\quad E_2:=\{(0,y); y\in[0,1]\},\quad E_2:=\{(x,1-x); x\in[0,1]\}$

に分けて最大値、最小値を考える。

$\displaystyle \max_{K^b} f=\max\left\{\max_{E_1}f,\max_{E_2}f,\max_{E_3}f\right\}
$

であるが、

      $\displaystyle \max_{E_1}f=\max_{x\in[0,1]}f(x,0)=2\quad(=f(1,0)),$
      $\displaystyle \max_{E_2}f=\max_{y\in[0,1]}f(0,y)=1\quad (=f(0,0)=f(0,1)),$
      $\displaystyle \max_{E_3}f=\max_{x\in[0,1]}f(x,1-x)=2\quad(=f(1,0))$

であるから、

$\displaystyle \max_{K^b}f=2\quad (=f(1,0)).
$

一方、

$\displaystyle \min_{K^b}f=\min\{\min_{E_1}f,\min_{E_2}f,\min_{E_3}f\}
$

において

      $\displaystyle \min_{E_1}f=\min_{x\in[0,1]}f(x,0)=\dfrac{2}{3} \quad(=f\left(\dfrac{1}{3},0\right)),$
      $\displaystyle \min_{E_2}f=\min_{y\in[0,1]}f(0,y)=\dfrac{1}{2} \quad (=f\left(0,\dfrac{1}{2}\right),$
      $\displaystyle \min_{E_3}f=\min_{x\in[0,1]}f(x,1-x)=\dfrac{2}{3} \quad(=f\left(\dfrac{1}{3},\dfrac{2}{3}\right))$

であるから、

$\displaystyle \min_{K^b} f=\frac{1}{2}\quad\left(f(\left(0,\dfrac{1}{2}\right))\right).
$

$ f$$ a\in K$ で最大になったとする ( $ f(a)=\dsp\max_K f$)。 $ a\not\in K^\circ$ である。実際、 $ a\in K^\circ$ であれば、 $ \nabla f(a)=0$, $ f$$ a$ で極大となるはずであるが、 $ K^\circ$ $ \nabla f(x)=0$ となる点は $ x=\left(\dfrac{1}{5},
\dfrac{2}{5}\right)$ のみで、 そこで $ f$ は狭義の極小となるので、極大とはなりえない。 ゆえに $ a\in K^b$. ゆえに

$\displaystyle \max_K f=\max_{K^b} f=2\quad (=f(1,0)).
$

一方、 $ f\left(\dfrac{1}{5},\dfrac{2}{5}\right)=\dfrac{2}{5}<\dfrac{1}{2}
=\dsp\max_{K^b}f$ であるから、$ f$$ K^b$ で最小値を取らず、 $ K^\circ$ で最小値を取る。 それは極小値であるから、 $ f\left(\dfrac{1}{5},\dfrac{2}{5}\right)$ でなければならない。

まとめると、$ f$ $ \left(\dfrac{1}{5},\dfrac{2}{5}\right)$ で最小値 $ \dfrac{2}{5}$ を取り、$ (1,0)$ で最大値 $ 2$ を取る。 $ \qedsymbol$

ARRAY(0xf66a50)


next up previous
Next: 2 Lagrangeの未定乗数法 (条件付き極値問題) Up: 多変数の微分積分学1 第23回 Previous: 多変数の微分積分学1 第23回
Masashi Katsurada
平成23年7月21日