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ヤコビ行列、gradient

$ \Omega$$ \R^n$ の開集合、 $ a\in\Omega$, $ f\colon\Omega\to\R^m$$ a$ で微分可能とするとき、 $ f'(a)$ は行列であった。具体的には、 $ f=\begin{pmatrix}f_1\ \vdots\ f_m\end{pmatrix}$, $ x=\begin{pmatrix}x_1\ \vdots\ x_n\end{pmatrix}$ とおくとき、

$\displaystyle f'(a)
=\begin{pmatrix}
\dfrac{\rd f_i}{\rd x_j}(a)
\end{pmatrix}=...
...rac{\rd f_m}{\rd x_2}(a) & \cdots &
\dfrac{\rd f_m}{\rd x_n}(a)
\end{pmatrix}.
$

この行列を $ f$ の ($ a$ における) ヤコビ Jacobi 行列と呼ぶ。

さて、$ m=1$ の場合を考えよう。このとき、

$\displaystyle f'(a)=
\left(
\dfrac{\rd f}{\rd x_1}(a) \dfrac{\rd f}{\rd x_2}(a) \cdots
 \dfrac{\rd f}{\rd x_n}(a)
\right)
$

と、ヤコビ行列は $ 1$$ n$列の行列、すなわち $ n$ 次元横ベクトルになる。 この転置である $ n$ 次元縦ベクトルを $ \grad f(a)$ または $ \nabla f(a)$ で表し、 $ f$ の ($ a$ における) gradient (勾配ベクトル) と呼ぶ:

$\displaystyle \grad f(a)=\nabla f(a)
:=f'(a)^T
=\begin{pmatrix}
\dfrac{\rd f}{\rd x_1}(a) \ \vdots \ \dfrac{\rd f}{\rd x_n}(a)
\end{pmatrix}.
$

記号 $ \nabla$ は単独でも ナブラnabla と呼ばれ、

$\displaystyle \nabla
=\begin{pmatrix}
\dfrac{\rd}{\rd x_1} \ \vdots \ \dfrac{\rd}{\rd x_n}
\end{pmatrix}$

という意味で用いられる。 いわゆるベクトル解析では多用される。


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Masashi Katsurada
平成23年6月5日