-- ある意味では、個々の問題の確率の定義は確率論の外にある --
確率とは、事象の確からしさを表わす尺度で、0 以上 以下の値を取
り、必ず起こる事象の確率は, 起こらない事象の確率は 0, などの性質
を持っている。
Laplace による素朴な確率の定義 |
Laplace は、標本空間が
で、根元事象
が同様に確からしい6とき、
の事象 の確率 を、
と定義した。
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- 現実世界の「試行」について、標本空間の設定は色々考えられるが、上のよ
うにして確率を定めるためには、根元事象がいずれも同様に確からしいように
する必要がある。例えば、二枚のコインを投げて、表裏を調べる場合に、標本
空間として
というのを考えると、根元事象は同様に確からしくはならない。二つのコイン
に区別をつけて -- 例えばコイン A とコイン B --、試行の結果を
というように結果を表わす、すなわち
を標本空間とすると、根元事象は同様に確からしくなる。
- 上にあげた「素朴な確率の定義」では、例えば
となっているような「正しくない」いびつなサイコロを扱うことが難しくなっ
てしまう。そこで、現代の確率論では、個々の問題における確率法則 の
決め方については言及せず、ただ の満たすべき法則だけを指定し、そこ
から導かれることを論じる。
桂田 祐史