1 平面極座標

平面に直交する座標軸 $ x$ 軸,$ y$ 軸を取って座標を入れる $ x y$ 座標系で、 $ (x,y)$ という座標を持つ点 $ \mathrm{P}$ の原点 $ \mathrm{O}$ からの距離を $ r$, $ \overrightarrow{\mathrm{OP}}$$ x$ 軸の正方向となす角を $ \theta$ ( $ 0
\le \theta < 2\pi$) とすると、

$\displaystyle \left\{
\begin{array}{l}
x = r \cos \theta \\
y = r \sin \theta
\end{array}\right.
$

がなりたつ。

写像

$\displaystyle f\colon
[0,\infty)\times [0,2\pi) \ni (r,\theta) \longmapsto (x,y) \in \R^2
$

$ C^\infty$- 級で、定義域を $ r\ne 0$ の範囲、すなわち $ (0,\infty)\times[0,2\pi)$ に制限すれば $ 1$$ 1$ である。特に

$\displaystyle f\vert _{(0,\infty)\times[0,2\pi)}\colon (0,\infty)\times[0,2\pi)\ni
(r,\theta)\longmapsto f(r,\theta)\in\R^2\setminus \{(0,0)\}
$

は全単射である。

逆の計算、つまり $ (x,y)$ から $ (r,\theta)$ を求めるには、$ r$ の方は

$\displaystyle r=\sqrt{x^2+y^2}
$

$ x$, $ y$ の式として簡単に表されるが、$ \theta$ の方は標準的な 記法がない。強いて書けば

   $\displaystyle \mbox{$(x,y)\ne (0,0)$\ のとき}$$\displaystyle \quad
\theta=\arg(x,y) \in [0,2\pi)
$

であろうか。多くの本に

$\displaystyle \theta=\tan^{-1}\left(\frac y x\right)
$

とあるが、 これは色々と問題を含んでいる式である (はっきり言えば「マズイ」)。 実際、$ \tan^{-1}$$ \tan$ の逆関数であるが、これが主値を表すと解釈すると値の範囲が $ (-\pi/2,\pi/2)$ と幅 $ \pi$ に制限されてしまう。この式だけでは 角度 $ \pi$ の差は無視されることになる。 そもそも $ (x',y')=-(x,y)$ として定義した $ (x',y')$ は、 $ (x,y)$ とは角度 $ \theta$$ \pi$ 異なるはずであるが、 $ y/x=y'/x'$ であるから、 $ \tan^{-1}$ を施す以前に角度 $ \pi$ の違いが消えてしまう。 それ以外の情報 ($ x$, $ y$ の符号など) から再生する手続きが必要になる。

$\displaystyle \theta \equiv \tan^{-1}\left(\frac y x\right)\pmod{\pi}
$

は正しい式であるのだが、これだけでは不十分であろう。



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桂田 祐史