1.1 不動点定理に基づく反復法

与えられた方程式をそれと同値な

(1.1) $\displaystyle x=F(x)$

に変換してそれを解くと解釈できる方法が多い。

方程式 (1.1) の解 $ x$ のこと を $ F$不動点と呼び、方程式 (1.1) の 解の存在を保証する定理を不動点定理と呼ぶ。

ここでは (1.1) のタイプの方程式を不動点型の方程式 と呼ぶことにする。

適当に選んだ $ X$ の要素 $ x_0$ から漸化式

(1.2) $\displaystyle x_{k+1}=F(x_k)$   $\displaystyle \mbox{($k=0,1,2,\cdots$)}$

で定めた列 $ \{x_k\}k\in\mathbb{N}$ が極限 $ x_\infty\in X$ を持つことがある。 $ F$ が連続であれば $ x_\infty$$ F$ の不動点である (これは (1.5) において $ k\to\infty$ の極限を取れば良い)。 このことを背景に列 $ \{x_k\}_{k\in\mathbb{N}}$ を実際に計算して、 十分大きな番号 $ k$ に対する $ x_k$ を方程式の近似解として採用する 方法を反復法と呼ぶ。


\begin{jtheorem}[Banach の不動点定理 (縮小写像に関する不動点定...
...で生成される列 $\{x_k\}$ の極限として得られる。\end{jtheorem}

証明. 有名なので省略する。例えば Schwartz [6] を参照せよ。$ \qedsymbol$ $ \qedsymbol$


\begin{jremark}
Lipschitz 定数 $<1$ の Lipschitz 条件を満たす写像...
...e \exists L<1$ を満たすならば縮小写像である。 \qed
\end{jremark}


\begin{jremark}[Banach の不動点定理の簡単な拡張]
$F$ そのもの...
...
\end{displaymath}で帰納的に定義される写像である。
\end{jremark}


\begin{jtheorem}[Brouwer の不動点定理]
$D$ を $\mathbb{R}^n$ の有界...
...とき、
$f$ は少なくとも一つの不動点を持つ。
\end{jtheorem}

証明. Zeidler [7], 増田 [18] 等を参照せよ。 $ \qedsymbol$ $ \qedsymbol$



桂田 祐史