3 畳み込みを利用した証明

(これは古いテキストに載せていたものである。)

一般の $ f(x)$ に対して、非同次方程式

(7) $\displaystyle y''+p y'+q y=f(x)$

の特解を求めるには、 (1) Laplace 変換を利用する方法, (2) 定数変化法など色々な方法があるが、 ここでは初期値問題の Green 関数を用いる方法を紹介する。


\begin{jtheorem}% latex2html id marker 234
[Green 関数による特解]
$2$\ ...
...係数2階非同次線型ODEまたまた}) の特解である。
\end{jtheorem}

この定理に現れた関数 $ G$ のことを 微分方程式 (7) の 初期値問題の Green 関数とよぶ。


\begin{jexample}
$y''-5y'+6y=e^{2x}$\ の特解を求めてみよう。
特性...
...、
$u=-x e^{2x}$\ も特解であることが分かる。 \qed
\end{jexample}


\begin{jdefinition}
区間 $[0,\infty)$\ で定義された連続関数 $f$, $g...
...{\textbf{畳み込み}}または\textbf{合成積}とよぶ。
\end{jdefinition}


\begin{jexample}
% latex2html id marker 292
関数 $e_n(x)$\ ($n=1,2,\cdots$) ...
...自然数 $n$\ について
成り立つことが分かる。\qed
\end{jexample}

畳み込みを用いると、 上の (9) の $ u$$ u=G\ast f$ と書けることが分かる。 畳み込みは上の定理の証明にも活躍する。 そのために少し準備しよう。


\begin{jproposition}[畳み込みの性質]
\begin{enumerate}[(1)]
\item $(c_1 ...
... ならば $f\equiv 0$\ または $g\equiv 0$.
\end{enumerate}\end{jproposition}
(1) は簡単であるので省略する。 (2), (3) は演習問題とする。 (4) は以下の議論に必要がないので省略する3$ \qedsymbol$

定理の証明に入る前に、 定数係数$ 1$階線型微分方程式の初期値問題

$\displaystyle y'-a y=f(x),\quad y(0)=0
$

の解は

$\displaystyle y=\int_0^x e^{a(x-y)}f(y) \D y
$

であることを思い出しておく。畳み込みを用いると

$\displaystyle y=(e^{a x}\ast f)(x)
$

とも書ける。

定理 $ A(x):=e^{\alpha x}$, $ B(x):=e^{\beta x}$ とおく。 $ u$

$\displaystyle u''+p u'+q u=f(x),\quad u(0)=u'(0)=0
$

を満たすとするとき、 $ v:=u'-\beta u$ とおくと、

$\displaystyle v'-\alpha v=(v''-\beta v')-\alpha(v'-\beta)
=v''-(\alpha+\beta) v'+\alpha\beta v
=v''+p v'+q v=f(x),
$

$\displaystyle v(0)=u'(0)-\beta u(0)=0-\beta\cdot 0=0
$

であるから、上に書いた注意より

$\displaystyle v(x)=(A\ast f)(x).
$

ところで

$\displaystyle u'-\beta u=v(x),\quad u(0)=0
$

であるから、$ u=B\ast v$. ゆえに

$\displaystyle u=B\ast v=B\ast(A\ast f)=(B\ast A)\ast f.
$

ゆえに $ G:=B\ast A$ とおくと、$ u=G\ast f$ となる。 以下 $ G$ を具体的に計算して求めよう。

$ \alpha\ne \beta$ の場合は

    $\displaystyle G(x)$ $\displaystyle = \int_0^x B(x-y)A(y) \D y =\int_0^x e^{\beta(x-y)}e^{\alpha y} \D y =e^{\beta x}\int_0^x e^{(\alpha-\beta) y} \D y$
      $\displaystyle =e^{\beta x} \left[\frac{e^{(\alpha-\beta) y}}{\alpha-\beta}\right]_0^x = \dfrac{e^{\alpha x}-e^{\beta x}}{\alpha-\beta}.$

一方、 $ \alpha=\beta$ の場合は、

    $\displaystyle G(x)$ $\displaystyle = \int_0^x B(x-y)A(y) \D y =\int_0^x e^{\alpha(x-y)}e^{\alpha y} \D y =e^{\alpha x}\int_0^x \D y =x e^{\alpha x}. \qed$



Subsections
桂田 祐史