73 MacTeX 2023 が来た

(しばらく工事中??)

前回「MacTeX 2022 が来た」の反省を元に、今年は3月中旬を過ぎてから、 JAISTのミラー を時々チェックしていた。

3月20日、 mactex-20230314.pkg を発見した。早速ダウンロードした。 5514266910 バイト (2022年版は 4961582623 バイトだった)。

Monterey, Intel Mac へのインストール      まずは試験的ということで少し古い Intel Mac にインストールしてみる。 mactex-20230314.pkg をダブルクリックで起動して、 クリックして行く…問題なく終了した。かかった時間は6分30秒程度か。

次は更新作業である (忙しい…)。
標準的なやり方 (ミラーサイトを利用)
sudo tlmgr option repository http://mirror.ctan.org/systems/texlive/tlnet
sudo tlmgr update --self --all

注: 実は 3月20日の段階では、 ミラーサイトにファイルが行き渡っていなかったためか次のような警告が出た。
tlmgr: The TeX Live versions supported by the repository
https://ftp.jaist.ac.jp/pub/CTAN/systems/texlive/tlnet
  (2016--2022)
do not include the version of the local installation
  (2023).
このメッセージは過去に見覚えがあって、1つの回避策として総本家の ftp://ftp.tug.org/texlive/tlnet を設定しておく、というやり方がある (「MacTeX 2019」 に記録がある)。 つまり、
まだミラーサイトに必要なファイルが揃っていない場合のやり方 (総本家を利用)
sudo tlmgr option repository ftp://ftp.tug.org/texlive/tlnet
sudo tlmgr update --self --all
とする、ということである。 3月23日の段階では、ミラーサイトに必要なファイルが到着していたので、 この回避策は不要になった。ミラーサイトを利用する方がずっと速い。

(2023/3/20) 1個の更新があった。
(2023/3/21) 9個の更新があった。
(2023/3/22) どんどん更新が増えて来た。
(2023/12/5) 久しぶりに新規インストールしたら、729の更新がたまっていた。 一通り更新するのに結構時間がかかる。

tlcontrib を使うようにして、日本語フォント関係の設定をする。
curl -fsSL https://www.preining.info/rsa.asc | sudo tlmgr key add -
sudo tlmgr repository add http://contrib.texlive.info/current tlcontrib
sudo tlmgr pinning add tlcontrib '*'
sudo tlmgr install japanese-otf-nonfree ptex-fontmaps-macos cjk-gs-integrate-macos
sudo cjk-gs-integrate --link-texmf --cleanup --force
sudo cjk-gs-integrate-macos --link-texmf --fontdef-add=cjkgs-macos-highsierra.dat --force
sudo mktexlsr
(注意: HighSierra 以降の macOS (現在身の周りで利用されている事実上すべてのmacOS) では、 --fontdef-add=cjkgs-macos-highsierra.dat を指定すれば良い。)

1行目の
curl -fsSL https://www.preining.info/rsa.asc | sudo tlmgr key add -
をするには、gnupg が必要で、私は MacPorts でインストールしている (sudo port -N install gnupg2)。 もっとも、この鍵の設定はサボってもあまり問題はないだろう。 つまり1行目は省略可能である。


さて動作テスト。 最近私が作る TEX 文書は upTeX を使うようになっている (昨年とはその点が違う)。 (以下それで uplatex とか ptex2pdf -u とかしている)。
uplatex nantoka.tex
dvipdfmx -d 5 -O 2 nantoka.dvi
open nantoka.pdf
xpdf-pdffonts nantoka.pdf

dvips -f nantoka.dvi > nantoka.ps
gv nantoka.ps

ptex2pdf -u -l -od '-d 5 -O 2' nantoka.tex
(xpdf-pdffonts は、xpdf に付属するユーティリティで、 PDFにどういうフォントが埋め込まれているかを調べることが出来る。 私は MacPorts でインストールしている。)

Ventura, M1 Macへのインストール     次に新しめの M1 Mac にインストールしてみた。 今度は mactex-20230314.pkg は3分で済んだ。他も問題なし。


以上、2台のMac (Intel, M1) にインストールして、問題なく動作しました、 という記録。


(ついでに) 日本語フォントを変えてみる     最近の MacTeX では、 デフォールトで HaranoAji フォントを使うようになっている。 それで十分と思えるけれども、 以前の “定番” である Hiragino フォント (大ざっぱに言って、新旧2つのバージョンがある) を使えるか試してみた。

最近の macOS (HighSierra 以降、現在最新の Ventura まで) に付属している Hiragino フォント (OTC) を利用するには、
sudo kanji-config-updmap-sys --jis2004 hiragino-highsierra-pron
(HighSierra 以降の macOS では、 共通の設定 hiragino-highsierra-pron を使えば良いことに注意)。
チェックするには、上と同じ
uplatex nantoka.tex
dvipdfmx nantoka.dvi
xpdf-pdffonts nantoka.pdf
で良い (最後の xpdf-pdffonts で、 実際に Hiragino が埋め込まれていることが確認できる)。

(ほぼ蛇足) 古い Mac では、購入時にインストールされていた macOS に、 古い Hiragino フォント (OTF) が付属していた。 それらのファイルを保存しておいた場合、 新しい macOS で利用しても構わないらしい。 そうするには、 /usr/local/texlive/texmf-local/fonts/opentype/public/hiragino にそれらフォントへのリンクを用意しておく必要がある。 私は MacPorts との絡みで、古いフォント・ファイルを /opt/local/share/fonts/otf/Hiragino に置くことにしているので、次のようにすればリンクが張れる。
cd /usr/local/texlive/texmf-local/fonts/opentype/public/hiragino
export POS=/opt/local/share/fonts/otf/Hiragino
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ明朝 Pro W3.otf" HiraMinPro-W3.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ明朝 Pro W6.otf" HiraMinPro-W6.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ角ゴ Pro W3.otf" HiraKakuPro-W3.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ角ゴ Pro W6.otf" HiraKakuPro-W6.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ角ゴ Std W8.otf" HiraKakuStd-W8.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ丸ゴ Pro W4.otf" HiraMaruPro-W4.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ明朝 ProN W3.otf" HiraMinProN-W3.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ明朝 ProN W6.otf" HiraMinProN-W6.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ角ゴ ProN W3.otf" HiraKakuProN-W3.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ角ゴ ProN W6.otf" HiraKakuProN-W6.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ角ゴ StdN W8.otf" HiraKakuStdN-W8.otf
sudo ln -s "${POS}/ヒラギノ丸ゴ ProN W4.otf" HiraMaruProN-W4.otf
sudo mktexlsr
cd -
この準備の後で
sudo kanji-config-updmap-sys --jis2004 hiragino-pron
のようにして設定する。チェックするには例えば
uplatex nantoka.tex
dvipdfmx nantoka.dvi
xpdf-pdffonts nantoka.pdf
(以下略)

(独白: しかし古い Mac の現役が急速に減りつつある。 Apple は古い Mac で最新の macOS が利用できないようにしまうので、 セキュリティ上の理由から、 古い Mac を学内ネットワークに接続しにくくなってしまうからである。 何かもったいないねえ。)


いずれにせよ、日本語フォントをデフォールトの HaranoAji に戻すのは簡単で
sudo kanji-config-updmap-sys --jis2004 haranoaji

…ともあれ、ここまでまだ2台しか試していないが、 今回も大きなトラブルなく新しい MacTeX に移行できそうである。

(続き1) その後、6台のMacにインストールを試みて、うち5台はスッキリ成功した。 1台だけ sudo cjk-gs-integrate -link-texmf -cleanup -force の段階で
cjk-gs-integrate [WARNING]: Cannot find cjkgs-notoserif.dat, skipping!
のような警告をたくさん出して失敗した。 WWWで検索して見つけた 「 一般フォーラム High Sierra でヒラギノフォントを使うための設定法」 が参考になった。 kpsewhich -format=miscfont cjkgs-notoserif.dat として、 /usr/local/texlive/2023 以下にある本来のファイルを探し出せないと おかしい、と。 すぐに「MacPorts にある TeX が悪さをしているのだ」と頭に浮かんで、 それが正解だった。 そのマシンだけ、環境変数 PATH で、 /opt/local/bin/Library/TeX/texbin よりも前にあって、 /opt/local/bin/kpsewhich が呼び出されるようになっていた。 PATH を直してから sudo cjk-gs-integrate -link-texmf -cleanup -force を実行したら無事インストールに成功した。 …しかし、Ghostscript で問題を引き起こした。 それについては、次のページで。


備忘録     なるべく一箇所に書いておいた方が良いだろう、ということで。

桂田 祐史