next up previous
Next: 参考文献 Up: 多変数の微分積分学1 第19回 Previous: 3 前回紹介した定理の証明


A. ガウス (Gauss) の消去法のアルゴリズム

連立 $ 1$ 次方程式の解法として、線形代数の教科書には クラーメ ル (Cramer) の公式掃き出し法 (ヨルダン Jordan の消去法ともいう) が 説明されていることが多いが、 ガウスの消去法は、掃き出し法を改良したものである1

例として次の方程式を取りあげて説明しよう。

(1) $\displaystyle \left\{ \begin{array}{rcrcrl} 2x_1&+&3x_2&-&x_3&=5  4x_1&+&4x_2&-&3x_3&=3  -2x_1&+&3x_2&-&x_3&=1.  \end{array} \right.$

掃き出し法では係数行列と右辺のベクトルを並べた行列を作り、それに
  1. ある行に 0 でない定数をかける。
  2. 2つの行を入れ換える。
  3. ある行に別の行の定数倍を加える。
のような操作 -- 行に関する基本変形と呼ぶ -- をほどこして、 連立方程式の係数行列に相当する部分を単位行列にするのであった。

$\displaystyle \left(
\begin{array}{cccc}
2&3&-1&5 \\
4&4&-3&3 \\
-2&3&-1&1
\e...
...c{1}{2}&\dfrac{5}{2} \\
0&-2&-1&-7 \\
0&6&-2&6
\end{array}\right)\rightarrow
$

$\displaystyle \rightarrow
\left(
\begin{array}{cccc}
1&\dfrac{3}{2}&-\dfrac{1}{...
...} \\
0&1&\dfrac{1}{2}&\dfrac{7}{2} \\
0&0&1&3
\end{array}\right)
\rightarrow
$

$\displaystyle \rightarrow
\left(
\begin{array}{cccc}
1&0&0&1 \\
0&1&0&2 \\
0&...
..._3
\end{array}\right)
=\left(
\begin{array}{c}
1\\
2\\
3
\end{array}\right).
$

ガウスの消去法も、前半の段階はこの方法に似ていて、 同様の変形を用いて掃き出しを行なうのだが、 以下のように対角線の下側だけを 0 にする。

$\displaystyle \left(
\begin{array}{cccc}
2&3&-1&5 \\
4&4&-3&3 \\
-2&3&-1&1
\e...
...\begin{array}{cccc}
2&3&-1&5 \\
0&-2&-1&-7 \\
0&0&-5&-15
\end{array}\right).
$

最後の行列は

$\displaystyle 2x_1+3x_2-x_3=5, \quad -2x_2-x_3=-7, \quad -5x_3=-15$

ということを表しているので、後の方から順に

$\displaystyle x_3=\dfrac{-15}{-5}=3, \quad x_2=\dfrac{-7+x_3}{-2}=2, \quad
x_1=\dfrac{5-3x_2+x_3}{2}=\dfrac{5-3\times 2+3}{2}=1
$

と解くことが出来る。前半の対角線の下側を 0 にする掃き出しの操作を 前進消去 (forward elimination)、後半の代入により解の値を求める 操作を後退代入 (backward substitution) と呼ぶ。


next up previous
Next: 参考文献 Up: 多変数の微分積分学1 第19回 Previous: 3 前回紹介した定理の証明
Masashi Katsurada
平成23年7月21日