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多変数関数

最初に記号から。 $ \vec a\in\R^m$, $ r>0$ に対して、

$\displaystyle B(\vec a;r):=\left\{\vec x\in\R^m; \left\Vert\vec x-\vec a\right\Vert<r\right\}.
$

これを $ \vec a$ を中心とする半径 $ r$ の開球と呼ぶ。

$ \Omega\subset\R^m$ に対して、

$\displaystyle \overline\Omega:=\{\vec x\in\R^m;\forall\eps>0\quad \Omega\cap
B(\vec x;\eps)\ne\emptyset\}
$

とおき、$ \Omega$ の閉包と呼ぶ。図形的には、 $ \Omega$$ \Omega$ の縁を加えたものである (後でもう少し詳しく説明する)。

$ \dsp\lim_{\vec x\to\vec a}\vec f(x)=\vec A$ とはどういう意味だろうか? $ \vec x\to\vec a$ の意味が問題であるが、 結論から先に言うと、$ \vec x$$ \vec a$ との距離 $ \left\Vert\vec x-
\vec a\right\Vert$$ \to 0$ となる、と約束する。


\begin{jdefinition}[多変数関数の極限]
$\Omega\subset \R^n$, $f\colon\Omega\to\R...
...ft\Vert\vec f(\vec x)-\vec A\right\Vert<\eps.
\end{displaymath}\end{jdefinition}

ここで図を描いて説明する。$ \vec x$$ \vec a$ に近づくというのは、 $ 1$ 変数の場合とは大きく様子が異なる。 $ 1$ 次元では、方向は1つしかなかったが、 $ 2$ 次元以上では、直線に沿った場合だけを考えても、 無限に多くの方向が存在するし、 曲線に沿って接近したりする場合もある。

記号の約束: $ A$$ B$ の差集合 $ A\setminus B:=\{x\in A; x\not\in B\}$.


\begin{jexample}
$\Omega:=\R^2\setminus\{(0,0)\}$, $f\colon\Omega\to\R$\ を
\be...
...となるはずだが、$0=\dfrac{k}{1+k^2}$\ となって矛盾が生じる。 \qed
\end{jexample}


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Masashi Katsurada
平成23年6月2日