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4 ラプラス変換を利用する方法

ラプラス変換は、道具一式を用意するのに手間がかかるが、 結局は一番見通しが良いかもしれない。 ラプラス変換を袖にする数学書も多いが、 学習しておく価値はあるな、と思う次第である。


\begin{jproposition}
$p$, $q$ は実数, $f\colon[0,\infty)\to\C$ を連続関数とす...
...pha$ と $\beta$ は、2次方程式 $s^2+ps+q=0$ の 2 根とする。
\end{jproposition}

Proof. 与えられた微分方程式をラプラス変換して、ラプラス変換の線形性を用いると

$\displaystyle L[x''(t)](s)+p L[x'(t)](s)+q L[x(t)](s)=L[f](s).
$

左辺第1項と第2項に、導関数のラプラス変換の公式

$\displaystyle L\left[g^{(k)}(t)\right](s)
=s^k L[g(t)](s)-s^{k-1} g(0)-s^{k-2}g'(0)-\cdots-s g^{(k-2)}(0)-g^{(k-1)}(0)
$

を用いて、初期条件 $ x(0)=x'(0)=0$ を代入すると

$\displaystyle s^2 L[x(t)](s)+p s L[x(t)](s)+q L[x(t)](s)=L[f](s).
$

すなわち

$\displaystyle (s^2+p s+q)L[x(t)](s)=L[f](s)
$

これを $ L[x(t)](s)$ について解くと (単に割り算するだけ)

$\displaystyle L[x(t)](s)=\frac{1}{s^2+p s+q} L[f](s).
$

右辺が積の形になっていることに注目して、

$\displaystyle G(t):=L^{-1}\left[\frac{1}{s^2+ps+q}\right](t)
$

とおくと、

$\displaystyle L[x(t)](s)=L[G](s) L[f](s)=L[G\ast f](s)
$

となるので、逆ラプラス変換して次式を得る。

$\displaystyle x(t)=G\ast f(t).
$

以下、$ G$ を具体的に計算する。 $ s^2+p s+q=(s-\alpha)(s-\beta)$ であるから、

$\displaystyle G(t)=L^{-1}\left[\frac{1}{(s-\alpha)(s-\beta)}\right](t)
=L^{-1}\...
...(t)\ast
L^{-1}\left[\frac{1}{s-\beta}\right](t)
=e^{\alpha t}\ast e^{\beta t}.
$

これを求めるのに、もちろん畳込みの定義に従って積分計算しても良いが、 次のようにラプラス変換を利用することも出来る。
(i)
$ \alpha\ne \beta$ のとき、

$\displaystyle \frac{1}{(s-\alpha)(s-\beta)}
=\frac{1}{\alpha-\beta}\left(\frac{1}{s-\alpha}-\frac{1}{s-\beta}\right)
$

であるから

$\displaystyle G(t)=\frac{1}{\alpha-\beta}
\left(
L^{-1}\left[\frac{1}{s-\alpha}...
...ight](t)
\right)
=\frac{1}{\alpha-\beta}\left(e^{\alpha t}-e^{\beta t}\right).
$

(ii)
$ \alpha=\beta$ のとき、(本当はちょっと準備が必要だが)

$\displaystyle G(t)=\lim_{\beta'\to\alpha}\frac{e^{\alpha t}-e^{\beta't}}{\alpha-\beta'}
=\frac{\D}{\D\alpha} e^{\alpha t}=t e^{\alpha t}. \qed
$

$ \qedsymbol$


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Masashi Katsurada
平成20年3月23日