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2B

(1) これはもっとも簡単な例のうちの一つだから、 楽勝だと思ったのだけれど…

$\displaystyle \sinh x=\dsp\sum_{k=1}^\infty\frac{x^{2k-1}}{(2k-1)!}.
$

(2) 微積分の入門書に $ \tan x$ のマクローリン展開が載っていることは稀である。 自分でやってみると分かるが簡単にはならない。 実は一般項を Bernoulli 数という数列を用いて表すことが出来るが、 ここでは省略する。

この問題では一般項を求めることが要求されているわけではなく、 素朴な計算を行えばよい。

$ f(x)=\tan x$ とおき、 $ f^{(n)}(0)$ ( $ n=0,1,2,3,4$) を求めよう。 地道に計算すると、

$\displaystyle f'(x)=\frac{1}{\cos^2 x}=(\cos x)^{-2},\quad
f''(x)=(-2)(\cos x)^{-3}\cdot(-\sin x)=2(\cos x)^{-3}\sin x,\quad
$

$\displaystyle f'''(x)
=-2
\left[
(-3)(\cos x)^{-4}\cdot(-\sin x)\cdot\sin x
+(\cos x)^{-3}\cdot \cos x
\right]
=6(\cos x)^{-4}\sin^2 x-2(\cos x)^{-2},
$


  $\displaystyle f^{(4)}(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle 6\left[
(-4)(\cos x)^{-5}(-\sin x)\sin^2 x
+6(\cos x)^{-4}\cdot 2\sin x\cos x
\right]
-2\cdot(-2)(\cos x)^{-3}(-\sin x)$
    $\displaystyle =$ $\displaystyle 24(\cos x)^{-5}\sin^3 x+12(\cos x)^{-3}\sin x
-4(\cos x)^{-3}\sin x$

から

$\displaystyle f(0)=0,\quad f'(0)=1,\quad f''(0)=0,\quad
f^{(3)}(0)=2,\quad f^{(4)}(0)=0
$

となることが分かるから、

$\displaystyle \tan x=f(x)=f(0)+f'(0)x+\frac{f''(0)}{2}x^2
+\frac{f^{(3)}(0)}{3!}x^3+\frac{f^{(4)}(0)}{4!}x^4+O(x^5)
=x+\frac{x^3}{3}+O(x^5).
$

これから $ A=0$, $ B=1$, $ C=0$, $ D=\dfrac{1}{3}$, $ E=0$.

なお、次のような工夫もある。$ y=\tan x$ とおいて、

$\displaystyle y'=\frac{1}{\cos^2 x}=1+\tan^2 x=1+y^2
$

に注意して、
  $\displaystyle y''&=$   $\displaystyle 2y y'=2y(1+y^2)=2y+2y^3,$
  $\displaystyle y^{(3)}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle (2+6y^2)y'=(2+6y^2)(1+y^2)=2+8y^2+6y^4,$
  $\displaystyle y^{(4)}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle (16y+24y^3)y' =(16y+24y^3)(1+y^2)=16y+40y^3+24y^5$

と計算して、$ x=0$ のとき $ y=0$ であるから…とすると、 少し簡単になる。

(3) $ x\to 0$ のとき

$\displaystyle \frac{\sinh x-\tan x}{x^3}
=\frac{x+\dfrac{x^3}{6}+O(x^5)-\left(x...
...}+O(x^5)\right)}{x^3}
=\frac{-\dfrac{x^3}{6}+O(x^5)}{x^3}
=-\frac{1}{6}+O(x^2)
$

であるから、極限値は $ -\dfrac{1}{6}$.


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Masashi Katsurada
平成16年8月1日