10 Abel の連続性定理に現れる収束範囲

冪級数 $ \dsp\sum_{n=0}^\infty a_n(z-c)^n$ が収束円周上のある点 $ z_0$ で 収束するならば、その冪級数は “Stolzの角領域” で一様収束するので、 和はそこで連続な関数である、というのが Abel の連続性定理で、 それにより、

$\displaystyle \frac{\pi}{4}=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\cdots+\frac{(-1)^{n-1}}{2n-1}+\cdots
$

などの有名な結果が証明できる。

例えば $ c=0$, $ z_0=R$ の場合、

$\displaystyle \Omega_K:=\left\{z\in\mathbb{C}\relmiddle\vert \vert z\vert<R,\quad
\frac{\left\vert 1-z/R\right\vert}{1-\vert z\vert/R}<K\right\}
$

であるが、これは一体どういう形なのだろうか?

stolz[K_, R_] := 
 Block[{g1, g2}, 
  g1 = ContourPlot[x^2 + y^2 == R^2, {x, -2 R, 2 R}, {y, -2 R, 2 R}]; 
  g2 = RegionPlot[
    x^2 + y^2 < R^2 && 
     Abs[1 - (x + I y)/R]/(1 - Abs[x + I y]/R) <= K, {x, -2 R, 
     2 R}, {y, -2 R, 2 R}]; Show[g1, g2]
 ]

R=1
Manipulate[stolz[K,R],{K,1,10,0.2}]

図 2: $ K$ を大きくすると膨れていきます
Image stolz

筆者は、Mathematica を使うまで、$ \Omega_K$ がどういう形をしているか、 実は良く分かっていなかった (そんなに難しくもないけれど、ちょっと考えて分かるものでもなくて、 何となく気になってはいたけれど、放置していました。)。



桂田 祐史