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微分積分学2
9月28日の演習の解説

桂田 祐史


Date: 2006年10月5日

(テキストの問題の詳しい解答を配布することは出来ないので、 要所要所を説明するに止める。)

2次元閉区間上の重積分

$\displaystyle \dint_{A}f(x,y)\;\D x\,\D y,\quad A=[a,b]\times[c,d]
$

がテーマである。これに対しては、次の公式がある。

$\displaystyle \dint_{[a,b]\times[c,d]}f(x,y)\;\D x\,\D y
=\int_a^b\left(\int_c^d f(x,y)\;\D y\right)\D x
=\int_c^d\left(\int_a^b f(x,y)\;\D x\right)\D y
$

どちらの変数で先に積分するのがよいかはケース・バイ・ケースで、 やってみないと分からない。

もしも $ f(x,y)=F(x)G(y)$ のように、$ x$ だけの関数と $ y$ だけの関数の 積に分解される場合は、

(☆) $\displaystyle \dint_{[a,b]\times[c,d]}f(x,y)\;\D x\,\D y =\left(\int_a^b F(x)\;\Dx\right) \left(\int_c^d G(y)\;\Dy\right)$

と 1 変数の問題に帰着される。

よく知っているはずの公式だけど結構間違えるので一言

( $ \heartsuit$) $\displaystyle \int x^\alpha\;\Dx=\frac{1}{\alpha+1}x^{\alpha+1}$   $\displaystyle \mbox{($\alpha$\ は $\alpha\ne-1$\ となる実定数)}$

という公式は、 (i) 指数 $ \alpha$$ 1$ を足す、 (ii) 微分して元に戻るように $ \dfrac{1}{\alpha+1}$ をかける、 と覚えることを勧める。 少なくとも結果を目で微分して元に戻ることをこころがけよう。 また次も忘れずに。

( $ \heartsuit'$) $\displaystyle \dsp\int (x+a)^{\alpha}\;\D x =\frac{1}{\alpha+1}(x+a)^{\alpha+1}.$

最初の (1), (2) は (☆) タイプ。

(1)
$ \sin y$ の原始関数は $ -\cos y$ であるが、 $ \dsp\int_0^{\pi/2}\sin y\;\D y=1$ は覚えても良いかもしれない。
(2)
これは基礎数学3で学んだ

$\displaystyle \int \frac{\D x}{x^2+1}=\tan^{-1}x
$

を用いる。この式自身を暗記してもよいし、 $ x=\tan\theta$ と置換すること1を覚えても良い。

逆三角関数 $ \tan^{-1}$ の値を求めるには、次が基本である (これから $ \tan^{-1}1=\dfrac{\pi}{4}$ が分かる)。

$\displaystyle y=\tan^{-1}x\quad\LongIff\quad x=\tan y$   かつ$\displaystyle \quad
-\frac{\pi}{2}<y<\frac{\pi}{2}.
$

(3)
$ (y-x)^2=y^2-2x y+x^2$ と変形して積分するのも案外簡単である ((☆) タイプになる)。

$\displaystyle \int_0^2(y-x)^2\;\Dy=\int_0^2(y^2-2xy+x^2)\D y=\cdots=2x^2-4x+\frac{8}{3}.
$

一方、( $ \heartsuit'$) を用いると、

$\displaystyle \int_0^2(y-x)^2\;\D y=\left[\frac{1}{3}(y-x)^3\right]_{y=0}^{y=2}
=\frac{1}{3}\left[(2-x)^3-(-x)^3\right]
=\frac{1}{3}\left(x^3-(x-2)^3\right).
$

これを $ x=0$ から $ x=2$ まで積分するのにも、同様のことをすればよい。
(4)
$ \sqrt{x+y}=(x+y)^{1/2}$ に気が付けば、後は ( $ \heartsuit'$) 2回。

    $\displaystyle \dint_{[0,1]\times[0,2]}\sqrt{x+y\,}\;\D x\,\D y$ $\displaystyle =\int_0^1\left(\int_0^1(y+x)^{1/2}\;\Dy\right)\D x =\frac{2}{2}\left[(y+x)^{3/2}\right]_{y=0}^{y=2}\Dx$
      $\displaystyle =\frac{2}{3}\int_0^1\left[(x+2)^{3/2}-x^{3/2}\right]\Dx =\frac{2}{3}\cdot\frac{2}{5} \left[(x+2)^{5/2}-x^{5/2}\right]_0^1$
      $\displaystyle =\frac{4}{15}\left(3^{5/2}-2^{5/2}-1\right) =\frac{4}{15}\left(9\sqrt{3}-4\sqrt{2}-1\right).$

(5)
$ \vert x\vert\le 1$ $ \LongIff$ $ -1\le x\le 1$ $ \LongIff$ $ x\in [-1,1]$ であるから、 $ A=[-1,1]\times[-1,1]$. また $ \dfrac{1}{x+y+4}=(y+x+4)^{-1}$ である。
(6)
これは $ x$$ y$ がまったく非対称なので、 先にどちらで積分するか問題になる。 見通しをつけるには、$ x=1$ とおいた $ y e^{-y^2}$ と、 $ y=1$ とおいた $ x e^{-x}$ とを見比べるとよい。 前者は置換積分、後者は部分積分と見通しがつく。 最後は計算を進めてみないと分からないが、 後者 (先に $ x$ で積分する方) は後がかなり面倒な計算になる。 $ -x y^2=u$ とおく ($ y$$ u$ で置換する) と、 $ -2x y\,\D y=\D u$, $ y=0$ のとき $ u=0$, $ y=1$ のとき $ u=-x$ であるから、

$\displaystyle \int_0^1 x y e^{-x y^2}\;\D y=\int_0^{-x} -\frac{1}{2}e^u \;\D u
=-\frac{1}{2}\left[e^u\right]_0^{-x}=\frac{1}{2}(1-e^{-x}).
$

先に $ x$ で積分すると、 $ \dsp\int_0^1\left[-\frac{1}{y}(e^{y^2}+e^{-y^2})+
\frac{1}{y^3}\left(e^{y^2}-e^{-y^2}\right)\right]\Dy$ となり、 ちょっと困る。
(7)
どちらの変数で先に積分するか見極めるために、$ x=1$, $ y=1$ を代入すると、 それぞれ $ y\sin y^2$, $ x^2\sin x$ となる。 前者 ($ y$ で先に積分する) の方が楽そうなので、 そちらから始めてみる。

$ x y^2=u$ とおく ($ y$$ u$ で置換) と、 $ 2x y\,\D y=\D u$, $ y=0$ のとき $ u=0$, $ y=2$ のとき $ u=4x$ ゆえ、

$\displaystyle \int_0^2 x^2 y\sin(x y^2)\,\D y=
\int_0^{4x}x^2\sin u\cdot\frac{1...
...=\frac{x}{2}\int_0^{4x}\sin u\;\D u=\cdots
=\frac{x}{2}\left(1-\cos 4x\right).
$

求める積分は、 $ \dsp\int_0^{\pi/2}\frac{x}{2}\left(1-\cos 4x\right)\Dx$ となるが、 $ \dsp\int_0^{\pi/2}\frac{x}{2}\;\Dx=\left[\frac{x^2}{4}\right]_0^{\pi/2}
=\frac{\pi^2}{16}$,

$\displaystyle \int_0^{\pi/2}x\cos 4x\;\Dx
=\left[x\cdot\frac{1}{4}\sin 4x\right...
...}{4}\int_0^{\pi/2}\sin 4x\;\Dx
=0+\frac{1}{16}\left[\cos 4x\right]_0^{\pi/2}=0
$

なので、値は $ \dfrac{\pi^2}{16}$. ちなみに、もし先に $ x$ で積分すると…ものすごく面倒になる。 (以上)




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Masashi Katsurada
平成18年10月5日