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(解説)
一般解という言葉は、常微分方程式のテキストには必ず現れる言葉であるが、 「どの微分方程式に対しても適用できる」 という意味で一般的に定義しようとすると、 意外と難しい言葉である。最低限、次の2点を理解すべきである (線形とそうでない場合に分けて考える、という1つのことなのかもしれない)。
(a)
(
線形常微分方程式の場合はわかりやすい定義ができる
) 線形
同次
常微分方程式の場合、 解全体の集合 (解空間と呼ばれることがある) は線形空間である、 という定理が成り立つ。例えば
(
)
という微分方程式に対して、 ある関数
,
,
が存在して、
(
) の解全体の集合
(
)
が成り立つ。この事実を
(
) の一般解は
(
,
,
は任意定数)
である。
と表現する。厳密な意味は (
) という集合の等式であるから、 次の2つが成り立つ、ということになる。
(i)
任意の
,
,
に対して、
とおくと、
は(
)を満たす。
(ii)
(
) を満たす任意の
に対して、 ある
,
,
が存在して、
が成り立つ。
(ここまでを正確に理解できれば、 「一般解というのは、微分方程式のすべての解を1つの式で表すものである」、 ということもできるだろう。 もっとも知らない人にそう言って正確に伝わるかどうか。 定義ではなく、1つの説明にすぎないと考えるべきだろう。)
以上は単独
階の同次微分方程式の場合であるが、
階連立の同次微分方程式
(
がベクトル値関数で、
が行列値関数)
の場合も同様である。 また、線形
非同次
常微分方程式
については、有名な
非同次方程式の一般解
同次方程式の一般解
非同次方程式の任意の特解
という公式が成り立つ (知っている人も多いだろう、 万一知らなくてもとりあえず大きな問題ないだろう、 ということで、詳しい説明は略する)。 この場合も、常微分方程式のすべての解を1つの式で表現できる。
(b)
線形でない常微分方程式の場合でも、多くの場合に、 解全体の集合の「大部分」をひとまとめに式で表すことができる。 そのとき,そのような形で表された解を一般解と呼ぶ。 その一般解にまとめることが出来なかった、例外的な解を
特異解
と呼ぶ。 一般解は方程式の階数と同じ個数の独立なパラメーターを含むことが多い (その点については、線形微分方程式の場合と似ている)。 そのパラメーターのことを「任意定数」と呼ぶ。 「大部分」という言葉があるため、 (この場合の) 一般解は厳密に定義されているとはいえない (これは線形の場合と大きく異なるところで、注意が必要である)。
特異解の具体的な例を1つあげておく。 クレローの微分方程式の典型例として有名な
は
(
は任意定数)
という一般解を持つ (確認:
とするとき、
) が、 これ以外に (これら直線解の包絡線になっている)
という特異解が存在する (念のため: 特異解は他にもある)。
必修課題
2
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2
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1
(
F.2
) は
変数分離型
の微分方程式であり、 有名な解法がある。それに従い (
G.1
) を導け。
必修課題
2
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2
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2
(
F.2
) は
定数係数線形常微分方程式
であり、 定数係数線形常微分方程式に対しては
特性根の方法
という有名な解法がある (付録の
C
節に説明してある)。 特性根の方法を説明し (定理を紹介せよ)、 それに従い (
G.1
) を導け。
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桂田 祐史