(この節の内容は全面的に杉原・室田 [22] のつまみ食いである。)
平野法は Newton 法を少し修正したものであるが、
大域的収束性を保証できるという大きな長所がある。1960 年代後半に
- 平野 菅保, 代数方程式の解法および誤差, 第8回プログラミングシンポジウム
報告集, 情報処理学会, 1967.
- B. Dejon and K. Nickel, A never failing fast convergent root-finding
algorithm, Constructive Aspects of the Fundamental Theorems of
Algebra (B. Dejon and P. Henrici, eds.), John Wiley, New York, 1969, pp. 1-35.
によって独立に提案された算法である。
アルゴリズムの解説と収束を保証する定理については、
室田 一雄, 平野の変形 Newton 法の大域的収束性, 情報処理学会論文誌,
Vol.21 (1980), pp. 469-474.
で初めて証明された。
は次のように考えて決める。 を の回
りで
(A.1) |
|
と展開する。もちろん
特に
通常の Newton 方では、 が根に十分近いことを前提にして、
(A.1) の右辺から と に対応する
項だけを取り出して、
(A.2) |
|
と近似して、これを 0 にする値
を修正量としている。
平野法では、
という 項近似を考え、これから定まる
を修正量の候補とし、それらの中で絶対値が最小のもの (これを と
書く) を修正量に採用する。
証明.
杉原・室田 [
22] を見よ。
が根 の十分良い近似値ならば となる (すなわ
ち Newton 法と一致)。さらに が単根であることを仮定すると、
補題の条件が成り立つ。
, は減速の仕方を決めるパラメーターである。
例えば , とする。
平野法の第 段の修正量の決定 |
- (1)
- (
) を組み立て除法で計算する。
とおく。
- (2)
-
(
) とおく。
- (3)
-
が最小である (
) を とおく。
- (4)
-
ならば、
として第 段を終了し、
そうでなければ
として、(2) に戻る。
|
(2) における 乗根の分枝は、
が最も小さくなるなものを選ぶ。
具体的には ,
を
で定めて、
に最も近い整数 を求め、
(A.3) |
|
とする。
証明.
元々は室田 [
22] による。杉原・室田 [
22] 第5章を見
よ。
桂田 祐史