2005年度卒研は「B コース」という、 大学院進学を考えない学生のための、 ゆっくり数学を学ぶ卒業研究というものを担当することになった。 色々考えた末、
ハイラー・ワナー (最近では「ハイラー・ヴァンナー」と綴られている) 著, 解析教程, シュプリンガーフェアラーク東京 (1997)を輪講することにした。 要するに、初歩の解析学 ( 微分積分学) を学ぶ直すわけだが、 普通にやると今一つ面白味にかけるので、 ``歴史順に'' 学んでみよう、 違った角度から見れば理解も深まりやすいし、 何よりも単なる復習に陥らずに済んで楽しいだろう、というヨミである。
やってみて分かったことが二つ。 一つは古くて「未整理な」ものを理解するのは、 それなりの腕力を必要とするので、そんなに甘くないということ。 もう一つは、 フォローするのにかなりの計算、それも数値計算が必要になることが少なくない、 ということである。 ところが、最初のうち多くの学生が、数値計算の追試をさぼってきた (電卓やコンピューターを持っている現代の我々にとって、 計算の追試は簡単のはずなのだが…)。 計算して初めて理解できることもあるというか、 特に数学的概念が未発達で説明する言葉すら不十分な時代の成果を理解するのに、 彼らがした数値計算のフォローは必要不可欠なことであろう (計算せよ、されば悟りが得られん)。 それで輪講中の貴重な時間を割いて学生に電卓を叩かせる (音声リモコンで電卓を叩く?)、ということをやった次第。 実は、経験に乏しいためか、電卓を十分に使いこなせない学生も多かった。 自分のことを省みると、 電卓を利用 (酷使) した経験は、 高等学校の理科を学んでいる時に積んだもので9、 最近の普通の大学生が押し並べて体験済みであるとは期待できないものなのかもしれない。 …それでどうしたかというと、 結局はコンピューターを使うことにしてしまった。 ただし、例年のようなプログラミングのトレーニング時間は取れないし、 通常の浮動小数点演算で済まない部分も多いので、 (仮称) 十進BASIC (by 白石和夫氏) を採用することにした。
十進BASICについては、 http://nalab.mind.meiji.ac.jp/~mk/syori2/jouhousyori2-2013-04/node3.htmlに書いた紹介文を参照のこと。
…結果については、学生達のレポートを見てもらいたいが、 この選択は成功であったと考えている。
百聞は一見 (一験) に如かず、というか、 見えなかったものが見えたような気がしている。